「賃上げで会社は強くなる」~賃金構造基本統計による見えざる投資と組織変革
「賃金構造基本統計調査」で見る日本の賃金の実態

厚生労働省の令和6年「賃金構造基本統計調査 概況」によれば
主要産業のフルタイム労働者の平均賃金は31万8,300円(月額)で
年間に換算すると約460万円の平均年収となります。
賃上げの「コスト」ではなく「投資」へ
最低賃金が引き上げられると、短期的には人件費上昇が避けられません。
しかし「賃上げ=コスト」と捉えるのはもったいない見方です。
人材定着によるコスト回収
離職1人あたり年間給与の30~50%に相当するコストがかかる
という海外企業のベンチマークがあります。
また、厚生労働省の「雇用動向調査」や新規学卒就職者の離職状況でも
早期離職によって数百万円規模の損失が生じることが示されています。
賃上げによる待遇改善は
採用・教育コストを減らし人材投資を回収する鍵となります。
「厳愛」の視点で賃上げを問い直す
賃上げの局面では「厳しさ」と「愛情」のバランスが問われます。
- 厳しさ:賃上げによるコスト増の現実を直視し、経営判断に書き加える
- 愛情:賃上げにより社員の安心と生活基盤を支え、組織の信頼を高める
この「厳愛」のアプローチは、賃上げをただの負担で終わらせず、
組織変革の原動力にできる発想です。
組織変革につなげる3ステップ
- 理念化:「社員を支え、共に成長する組織」という理念に
賃上げを結びつける - 管理職研修:数字の面だけでなく「社員を育てるためのコスト」
として賃上げを捉える。 - 風土づくり:休める組織文化(「お互いさま」「お陰さま」)
を醸成する
まとめ~データと理念で形づくる未来、その前提は組織変革
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の内容からは、勤続年数が長いほど賃金が上がり
適切な賃金水準が人材定着を促していることが分かります。
これは大企業だけでなく中小企業にも当てはまります。
特に人手不足が深刻化する今、中小企業では一人ひとりが長く力を発揮
してくれることが経営に与える影響は大きく
その効果はより直接的に表れます。
つまり「人件費=負担」という短絡的な見方ではなく、
人件費は人材投資であり、長期的には企業の収益力として回収される
という発想が必要です。
短期的には厳しく見える変化も、実際には人材定着
・生産性向上・信頼の獲得につながる投資なのです。
そして忘れてはならないのは、人材定着を実現するためには
まず組織変革が必要だということです。
制度だけではなく、職場の「空気」と「理念」を共有し
社員が安心して働き続けられる環境をつくること。
これこそが、中小企業にとって人手不足を乗り越える最大の武器になります。
「制度は整えたのに成果が出ない」「採用してもすぐ辞めてしまう」
そんなお悩みがありましたら、今が組織を変えるチャンスです。
参考資料
厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査:結果の概況」ページ
同調査の属性別・産業別データ(PDF)
e-Stat:令和4年 雇用動向調査 結果の概況
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(就職後3年以内離職率)」
